最近は映画を見にいく頻度が増えてきている。
3月にデデデデ前章を見た時に、広告で出た気になった映画をちょこちょこと見ている。映画を見に行ったのは1月の傷物語以来で、2ヶ月近くは空いていた。まぁ気になる映画もなかったし寒くて出掛ける意欲もなかったからいいんだけど。
ただ映画を見たとて、そこまで長文で書くほど大きな感情は湧いていないのでザッと書いていこうと思う。しかしこれは映画自体がつまらなかったわけではなく、むしろ面白かったから特段語彙力がない私には読者が面白がる内容の文章が書けないというだけだ。
まずは傷物語。これは以前3章に分けた映画作品を1本にまとめた総集編のような映画アニメ。私は前に公開された3篇とも見ていたが、色々不満が残っていた(テンポが悪い、原作のギャグを拾っているがそのせいで主軸の話に集中できない、キスショットの影が薄く羽川の描写の比重が多すぎる)。
今作は2時間半という長尺とはいえ、1本にまとめたおかげで不満はそれなりに解消された。テンポが悪いのに半年以上待たされたあの感覚はない。コメディさとシリアスの比重もちょうどよく、むしろシリアスを増やしたことで元々あったアクションシーンの不気味だけどコミカル描写が前よりも嫌味なく見られたのが好印象だった。ただ相変わらずなんか間が長いな…という感触は残っていた。元々会話劇がメインのシリーズなのでそれは特色なのかもしれないが、ここは好みの問題になるのだろうか?
惜しい点としては、原作でも印象的だった「羽川のパンツを奪う阿良々木」「羽川の胸を揉むか揉まないかで悩む阿良々木」のシーンはカットされていること。でもこれこそキスショットの影を薄くしてしまい1本の映像作品としては冗長になる場面ではあるので、カットは妥当と思う自分もいる。まぁ見たい人は3章分けられている方を見てねという感じか…
映画作品としては3編に分けられた方よりも今回の「傷物語 こよみヴァンプ」のほうがおすすめしやすいし、こっちの方が好きだった。
次に見たのは「デデデデ 前章」。
「おやすみプンプン」の浅野いにお原作漫画を映画化したもの。プンプンを途中まで見ていた自分としては「やばそうな作品だな…」と怖いものみたさで見に行った次第。
で、率直な感想として「ちゃんと浅野いにお作品の味が出てて、わかりやすく見られる映画」になっていて面白かった。
デデデデの原作は見ていないのでオチは知らないが、伏線が残っており考察も捗る内容。前半の「世界がどうにかなってしまいそうな装いの中で日常を送る東京のぴーぽー」の雰囲気がまた最高に良く、その必死さとどこか傍観者と化した世界観が好みだった。後半にはいると主人公2人の過去編にはいり、実は過去に宇宙人と関わりがあったこと、メガネの方は自殺にまで追い込まれていったことが描かれている。こっちは前半で見せた主人公とは性格が違うので、過去からどのようにして現在の2人になったのかは後編まで待たなければならない。前半で見せてきた生々しい人間描写からひっくり返す展開は面白い。早く続きが見たい。
いや、しっかりいにお作品を映像化してるな!と感心した。作画は個人的にはあまり良さがわからなかったが、あの浅野いにおのキャラのように、口の位置が右に寄ったり左に寄ったりを統一して動かすのは描くのは大変だったろうな…と思う。演出も良く見えた。主人公のメガネが先生のアパートの一室で二人きりになった時の微妙な距離感がドキドキした。あと作中で死んだ女の子と屋上にいるシーンで、その子と他の友だちメンツの立ち位置を上下に配置することでその時の視点の違い、上にいる女の子がUFO(天)に近いという辺りでちょっと死亡フラグを匂わせていたのも良い描写だったと思う。そういった細々とした匂わせや心情描写が各シーンに織り込まれていたので、見ていて飽きなかったなぁ。
次に「オッペンハイマー」。
「ダークナイト」や「インターステラー」のクリストファー・ノーラン監督作品。予告で見たときから主演の方の顔の印象が強く残っていたので見てみようと決意。
見た感想として「難しいし疲れた」だった。
原爆の父と呼ばれるオッペンハイマーという人物を主観にして描いた作品だが、とにかく人物が多い。そしてその人間関係が後半の科学会の政争に発展したりするので、もう誰が敵で誰が味方かようわからんくなった…人の名前と顔の一致が苦手な自分は疲れてしまった。途中モノクロのシーンも挟まれているが、これは後半に出てくるオッペンハイマーを敵として見ている人物が主観になっている場面らしい。改めて見返してみたら面白そうだ。
さて、このオッペンハイマーという人物はこの作品においては「感情的ではあるが、理論と理屈に縛られる人」という印象が残った。序盤の若きオッペンハイマーが「理屈屋で実験が苦手」というのが引っかかっていたので、個人的にはそう解釈した。かなり複雑な作品なのでもっとしっかり内容を咀嚼した人には敵わないが、一度見た限りの自分はそういうふうに捉えた。
で、そういう気質なオッペンハイマーは自己の理論を深めたり発見したりするのに、様々な視点を見ようとする。そのため、当時のアメリカとしては敵国の思想である共産主義の人とも交流を持ったりしていた。そしてその共産主義の女性と恋人になったり結婚したりするわけだが、本当の意味で理解し合ったり助け合ったりすることは出来ていなかった。恋人だった女性は思想が深く感情的で繊細だったがオッペンハイマーを一人の人物として最も理解していた。しかし彼は彼女の求めるものを理解できず、最終的に自殺してしまう彼女のそばにいられなかったことを悔やんだ。もう一方の結婚した女性は、将来アメリカでオッペンハイマーが必要になることを理解し、彼の研究を支えることで導いた。しかしこの彼女は個人としてオッペンハイマーを理解することはなく、また彼と設けた子供二人の世話に対しても事務的でありそもそも興味を示していなかった。後半には政争に巻き込まれるにつれ、政争自体に興味を示さないオッペンハイマーに対し戦うことを強いる(原爆の成功で得た富が失くなることを悔しがっていたのが理由かな?)。描写的には彼を原爆の父へ導いているものの個人として寄り添うことはない。最後まで彼の味方ではあったものの誰も信用していないようにも見えそら恐ろしく思った。
オッペンハイマーは、研究の為に合理性を求めそれに対し他の者から反感を買っていた。研究を早く進める為に情報共有が最善と考え砂漠に一つの街を作る。そこにスパイが混ざることを散々警告されたが、大丈夫だと退けるオッペンハイマー。共産主義者だった弟も実験に参加させたり割と好き放題やり、実験こそ成功したが結果ソ連でも原爆実験が行なわれたことが知らされ後にスパイが紛れ込んでいたことも明らかになった。
「弟だから」「今は共産主義者ではないから」「大人だから」と、そこに絡むリスクに対しあまりにも楽観的だった主人公。そこには彼が「レッテル」を過信し過ぎているからに見えてならない。物事全体を記号として捉えてしまう悪癖なのだろう。そして彼が若い頃から見ていた未知のビジョンが、原爆の成功により「世界が燃え盛るビジョン」に記号化されたとき、彼はビジョンを見る目を閉じたという最後のシーンは印象的だった。
とはいえ、主演の方の表情がとにかく濃いので見応えがあるのだが、後半は特に会話劇になる為顔アップが非常に多いしカット割りも多い。伏線と人物の多さと一風変えた演出とでかなり頭も使うので見た後の疲れは結構あった。面白い作品であるのは間違いないけど、二度目も見るには重い腰を上げる必要があるかな…。
最後に「劇場版 名探偵ホームズ」。
これは宮崎駿監督が最後に制作したTVシリーズの劇場版作品。もともとはTVシリーズとして制作した作品だが、資金提供していたところからの送金が途絶え6話分制作時点で制作中止になったそう。それからナウシカが公開する時に内の2話が併映され、それをきっかけにスポンサーを獲得。以降20話分の制作をルパン三世2ndの監督が引き継ぎ、後に放送された経緯がある。ちなみにラピュタが公開された時にも宮崎駿監督が制作した内の2話が併映されている。
なので劇場版は宮崎駿監督が制作に携わったものを2話ずつ、1984年と1986年に公開している。それを2つともつなげた計4話を繋げ、今回再上映として公開された。40周年だかららしい。
というわけで感想は「やっぱ面白いなぁ」。
一応以前にDVDBOXを持っていたので一通りTVシリーズは目を通していたのだが、宮崎駿監督の回はやはり珠玉の出来。起承転結がしっかりあり、25分でも満足度が非常に高い。得意の飛行機や軍艦のアクションもあって見応え十分。キャラクターもコミカルに動き、その動きの演技の細かさとアイデアがわかりやすくかつ面白い。特に青いルビーの回とドーバー海峡の大空中戦は最高。本当にTVシリーズとして制作されたのかわからないくらい作画も美術もクオリティが高くて眼福。話もよくまとまっているが「でもどうやって解決するんだろう?」というワクワク感もあっていうことなし。
宮崎駿作品はカリオストロの城、ラピュタ、もののけ姫、風立ちぬが特に好きなのだけど、映画に限らず手掛けたテレビアニメ作品も追っていくとまた発見も多そうだ。今度未来少年コナンも最初の4話だけ劇場公開するらしい。でも4話だけなんだよね…。未来少年コナンは途中まで見たけど、配信だと画面の上下が切られており当時のレイアウトが歪んでしまう為あまり配信で見たくない気持ちがある。でもDVDをレンタルして見るのももどかしい…というところで、見るのが止まっている作品だ。見たい…けど、どうせなら100%の形で見たい。
今日はこういう感じで、おわり。
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