劇場版ウマ娘観てきました。
総評すると『個人的には最高!!!』でした。
大好きなアニメ作品の1個になりましたね。
ちなみに私はウマ娘というコンテンツについては、2期放送時に知ってゲームの方も2年近くプレイしていました(引退済み)。アニメは1期、2期、3期、RTTTと履修済みです。以上を前提として感想を書いていきます。
【良かった点】
①現代アニメの表現の延長線上に挑戦していた
まずこの映画を観て最初に度肝を抜かれたのは音響です。レースシーンにおいてキャラが喋るんですが、ほとんど聞こえない部分が結構あるんですよね。歓声、環境音、足音、ナレーション、それらにかき消されている。これが凄い没入感と臨場感を与えてくれていました。
OPでも顕著で、歌声がほとんど聞こえずほぼインスト?のようにも感じました。ここで既に『この映画はこういう方向性だよー』というのは示していましたね。
そしてその音響に負けないくらい画力も凄い。今作は主人公のジャングルポケットを筆頭に顔の作画をこれでもかと崩したりタッチを変えたりしてるんですが、それがまた迫力を出している。
私はもう、開始5分で涙が流れてしまいました。なんか凄いの始まったって。
レースシーンでの顔を崩す表現といった外連味はガイナックス(今だとトリガーか)を彷彿とさせます。私自身、グレンラガンを始めガイナックス作品が好きなのでもうこの時点で好きな要素マシマシではありました。
レースシーンは①フジキセキの弥生賞 ②テイエムオペラオー ➂ジャングルポケットとタキオンの弥生賞 ④皐月賞 ⑤日本ダービー ⑥ジャパンカップ といった流れで計6つ。
個人的には③~⑤の描写が好きで、とにかく迫力が凄い。主観視点、引きの視点、定点視点、心象描写とそれぞれアングルや描写を変えながら最高に盛り上げれくれましたね。
レースシーン以外の描写も良かったですね。タキオンの部屋、ジャンポケトレーナーの部屋の内装の情報量が心地いい。なんかあれだけ見ても「ふぃー、良い美術だぜ」ってなっちゃいます。ジャンポケトレーナーの家がなぜかあしたのジョーまんまで笑いましたが。
全編通し画面いっぱいに使ったレイアウトがまた良くて、画面端にキャラを配置したり、レース前の廊下を歩く描写がカッコよかったですね。画の取捨選択が気持ちいい。
久々に「劇場版クオリティの高級アニメを見たなぁ」と大変満足しました。
②無駄のない脚本
構成が良かったですね。軸をジャングルポケットとアグネスタキオンに絞っていたので非常に見やすかった。
もちろん他にもフジキセキ、マンハッタンカフェ、ダンツフレームと他にもメインキャラはいますが、主にジャンポケとタキオンの話と言っていいでしょう。
フジキセキについてはタキオンよりも出番が多かった気すらします。しかし『アグネスタキオンと同じく、才能がありながら4戦で故障し挫折したウマ娘』という共通点があり、それを最大限に活かしていました。
タキオンが圧倒的な実力をジャンポケに見せつけ、ジャンポケの本能むき出しの走りでフジキセキの本能を呼び覚ます。タキオンの幻影に追いつけず挫折するジャンポケを導くフジキセキ、そして復活し最強の走りを目指すジャンポケを見て再び走ることを決意するタキオン…と、ほぼほぼこの3人の物語でした。
アニメ3期の不出来が嘘のように、作画と音を邪魔するどころか引き立てていた脚本は素晴らしかったです。もちろん取捨選択した為に出番が少なくなったキャラはいますが、個人的には許容範囲です。
あとウマ娘はアクの強いキャラ付けもあります。アグネスタキオンのマッドサイエンティスト路線やマンハッタンカフェの霊感がある設定など…
ただこの映画については、タキオンは心情の読み取りにくい走りの探究者、カフェは見えない友達をこの映画のテーマである『自分の可能性・または理想の自分』とすれある程度腑に落ちるように作られています。上手くやってますね。
誰に感情移入されるか、誰を主軸に置くかコンセプトを決めていること。どっしりとテーマを据えていること。と、しっかり練って作られてるのが好印象でした。
③作画と音だけじゃない、外連味の効いた演出
演出も良かったですね。特に場面の切り替えや展開の圧縮の仕方に思い切りがあって気持ちいい。OPでジャンポケの入学からフジキセキとの対面、デビュー戦勝利を終わらせてたのも素晴らしい。
レース紹介の時のどでかい文字をゴシック体で出していましたが、これが非常にかっこいい。ただ文字を出すだけでワクワクさせるのは良作品の証拠(エヴァみたいなね)。
あとはアイテムとしてガラス玉が出てきていましたが、あれは多分ウマ娘の可能性のメタファーとして扱われていましたよね?あれをキャラに対しどういう配置にするかで、ジャンポケやタキオンの心情も表現していました。
他にも柳や広葉樹(木の名前なんてそんな知らん)を使い、フジキセキが願いを託す側から託される側なったことを表現してたりとアイテムの使い方がわかりやすく、かつ効果的に使ってます。
あと何気に飛行機も比喩として使ってましたね。タキオンが皐月賞後、空に浮かぶ飛行機雲を見ている(つまり通り過ぎていった)ところと、挫折しながらも走り続けるジャンポケがフジキセキと夜中に話すシーンで上空で飛行機が飛んでいる音が鳴っていたり、さりげなく対比していました。
もしかしたら他にも色々あるかもしれません。もっかい見にいきたいなぁ…
キャラクターがちゃんとセリフで説明してくれますが、それ以上に画で語ろうとする姿勢が随所に見られたのが本当に好きです。全力でしょうこれは。
ちなみに監督は31,2歳くらいと私とほぼ同い年らしい。強すぎィ!!
【気になった所】
①ウマ娘というベースの設定とコンテンツについて
この作品のテーマが『ウマ娘賛歌』ですが、そのウマ娘自体の設定がふわーっとしてるので、映画が初見の人には結構厳しいかもしれません。
ざっくりいうと可能性と限界への挑戦って感じなので、熱血スポ根ものとして観ることは出来ます。しかしタキオンを筆頭に「ウマ娘とは?」「ウマ娘の可能性とその先へ」を繰り返し提示してくるんですよね。作中でウマ娘そのものの設定に踏み込むわけでもないので、『結局ウマ娘ってなんだったの?』という感想になりかねない危うさがあります。
またラストのライブシーン。浮きすぎです(笑)。ウマ娘はレースに勝つとライブをする流れがあるんですが、この作品ではもうカットして良かったんじゃないかなぁ…と。だってコンテンツに結構触れた自分でさえかなりビックリしたのに、初見さんだったらドン引きしてもおかしくないですよ。
これでも相当単品の作品として楽しめるようにチューニングしているとは思いますが、その分ノイズが気になってしまいました。
②各キャラの描写格差について
この点については良かった点としても挙げたように、よく絞って描写した方だと思います。
ただ一つ、マンハッタンカフェの扱いについては文句を言いたいです。メインキャラの1人として登場し、故障などで実力を発揮できず中盤までくすぶっていました。で、菊花賞でジャンポケをくだし勝利するんですが、その描写があっさり過ぎます。
マンハッタンカフェがレース直後に勝利の余韻に浸っていたりした描写があれば、それまでのクールキャラとのギャップもあって良かったのになぁと。その後にジャンポケの曇り顔を対比として描けたでしょうし…
せめて1,2カットだけでも描写入れて欲しかったですね。セリフなくてもいいから。
【まとめ】
とはいえ観る価値のある作品に間違いはないです。パワーと意欲に溢れた1作。
ウマ娘に触れたことがあり、アニメが好きという人は迷わずGOしてください。初見でも楽しめるくらいには主眼を絞っているので興味があれば是非。
ファンサービスも豊富で、小ネタとしてアプリ内のキャラが大量に出てきたりしていたので、キャラが好きな人は繰り返し見にいくのも一興かと。友人枠のキャラが喋って登場するアニメは劇場版だけ!!(個人的に桐生院とハッピーウィークが出てきてくれたのが一番嬉しかった)
それでは、また
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