観てきました、デデデデ。
総評としては『納得しきれないけど、いにお作品の映像化としては100点』です。
この作品は浅野いにお原作漫画の映画化作品。浅野いにお作品は10年くらい前に『おやすみプンプン』を数巻、『ソラニン』を読了したくらいの認知度です。浅野いにお作品を見ていて感じるのは
デフォルメの効いたキャラデザインと、性的な描写も含めた人間の生々しい部分の描写のアンバランスさでしょうか。どこか不気味で、どこか官能的な。そんな独特の世界観が最大の特徴だと思っています。
デデデデについては原作未読ですが、この映画を観た限りでは「浅野いにおの世界観は完全に再現しているな」と感じました。凄いと思います。
このキャラデザを統一して作るのも大変だったでしょうね。口の位置とか凄い斜めにくっついていたり、それを(特に主役のおんたん)ぐるぐる回して描くのは大変だったと思います。
【良かったと感じた所】
①まずは前章と後章の前半であった日常描写です。現実に超常的な出来事が起きているけど、目の前の日常を過ごすメインキャラたち。自分が一番好きなのはこの部分です。
いつか何か起こるんじゃないかという不安は抱えつつも、ある者は異物を直視し、ある者は無視している。主人公側はその無視する側として普通に学校に通い、友達と遊び、恋をしていく。どこか楽観的でありながらも、どこかでは人が死んでいるとニュースが流れている。その世紀末感が凄い好きでした。
やがて超常的な物に友人が殺されるんですが、主人公のおんたんとかどでは哀しみつつも日常の中で前に進んでいきます。あくまで超常的なものとは敵対しない。そのバランスも良かったですね。侵略者というものが自分たちにはどうしようもない災害として扱ってました。
個人的にはかどでと高校教師の渡良瀬との関係が良かったです。絶妙な距離感でしたね。かどでの大人への憧れと恋慕がまた。アパートにあがり無防備を晒しているかどでがまた煽情的でいいんですよ。期待というか誘っている。
渡良瀬もどこか下心をのぞかせつつ距離を縮めたり離したりするのがいいなぁと。後章では付き合わなかったけど致しちゃいましたね。でも渡良瀬も直前まで生徒(子供?)として見てしまう目線があったり、本当微妙な関係を描くのは上手いなぁと思いました。
②ふたばの扱いですかね。面白かったです。
ふたばは上京の際に「物事を頭ごなしに否定しない」ことを信条としています。侵略者駆除反対の意思はもともとありましたが地元ではそれが受け入れられなかった。東京に来て自分と同じ考えを持つ人がいることに感心していましたが、それに対しておんたんが「そういう場所に来たからだろ」とツッコんでいたのは鋭かったです。
それからふたばはSHIPに入って擁護運動をしはじめるんですが、次第に過激な活動に誘導されていき、己の行動や浅はかさを反省することになりました。擁護運動も街頭でビラを配ったり、事件を起こし注目を集めようとしたりかなり打算的です。諸々見ると、結局ふたばはただ自分の考えが正しいと認められたかっただけかもしれないですね。
ちなみに同時に登場したマコトは「誰からも愛されたいから女装する」キャラとして出てきますが、実はこっちのキャラの方が「物事を否定しない」ムーブしてます。
③ミクロからマクロの展開へと繋げていくのが良かったです。
というか内面描写が得意な浅野いにおがSFでセカイ系を描くとなったら、これが最適解でしょうね。
言ってしまえばこの物語はおんたんがきっかけで大変になっちゃったって感じ。
これ、おんたんが前の世界戦でかどでが死んだことを受け入れてれば、大勢の命が失われることはなかったんですよね。まぁそれはいいんですけど、死んだ元カノの為に復讐を始めた小比類巻とか、人類滅亡を止めようとする大野が奮闘する。それらを他所におんたんとかどでは新しい世界線で本筋に関わらないのがグロイ話だなぁと思いました。
おんたんが、かどでと一緒に過ごす世界を望んだだけで…というのが残酷な話ですよね。
【気になった点】
①まず自分はこの作品があまり好きじゃないです。前章前半のわくわく感は好きなんですが、凄く咀嚼しにくくて消化不良を起こしちゃいました。それぞれのキャラの役割とか、結局どうだったんだろうなと。
1番は全体的な構成が気分悪いです。前述しましたが奮闘している小比類巻や大野、ふたばまで。事態に対し行動を起こしているキャラが尽く良い方向にいかない。おんたんやかどでもそうです。
正しいと思ったことをする…行動を起こす…それに対し非常に冷笑的なんですよね。ある意味浅野いにお作品らしいですけど、だからこそ好きじゃないと感じます。
②大野の扱いですね。おんたんと恋仲になるのはいいんですが、ちょっと関係進展の説得力が足りないと思います。大野は侵略者で、たまたま優しい地球人と会ったから融和を目指したいと行動に移すんですが、なんかそれもイマイチ納得できない…
積み重ねが足りないと思うんですよね。もう少し前章で他キャラと絡ませてよかったと思います。
あと融和派である侵略者たちが大野を助けてくれるのも何かご都合に感じてしまいます。派閥が分かれているという情報を事前に掴んでいたので、先に地上の融和派を探して作戦を立て母艦の墜落を止める…といった方が流れは自然だったのではないでしょうか。大野が母艦を止める行動に移るのも遅すぎた気がします。
【まとめ】
前章と後章で2か月と間隔が空いていたのもあり、感想もうろ覚えなことが多くきつかった…
もっと各々のキャラの立ち位置とか理解出来れば楽しめたのかもしれないですが、自分は★3.5という評価にしておきます。でも割と評判いいですよねこの映画。
ラストの母艦爆発→東京壊滅のシーンはド迫力のエフェクト作画って感じで快感でしたね~。あそこでおんたんの兄と渡良瀬が死ぬのも、おんたんとかどでの罰だったのかもしれないですね。
浅野いにお作品はどこか苦手ですが、唯一無二ではあると思うので他作も少し見たくなりますね。
それではまた。
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