【★3.0】陰陽師0【時代劇”風”呪術エンタメ】

陰陽師0。

劇場の予告でよく流れていたが「なんかこの作品(色んな意味で)面白そうだな」と感じていた。公開3日目の夜勤明けの日、ついに見に行ってしまう。

総評としては「楽しかった!(完成度は度外視)」。

私はこの作品の原作も、2000年代に公開されている「陰陽師」も見ていないうえでの感想だということを前提として書いていく。

個人的に良かった点としては、ミステリーパート。

まず最初に説明された「呪(しゅ)」の設定が個人的に好き。派手さはないものの『どこで術をかけられたか』『何が起きて事件になったか』を考えるのは普通に面白かった。遺体を直に調べたり主人公の特異性をよく出していたし、探偵としても優秀。主人公無双ものとして見ても気持ちが良かった。

主人公が好印象だった。阿部清明の立ち姿のシルエットが良い。衣装は他の学生と大差ないように見えるが、妙に撫で肩なシルエットは異彩を放っていた。性格もまぁ昭和から続く島耕作的な「階級に縛られない、己のカリスマで無双する系」といった感じで、よくある物だけど見やすくわかりやすかった。そこまで嫌味なく見れたのもよかったろう。

さて、じゃあ気になった点を挙げていく。

①モブどもの適当さ

主人公が陰陽寮の学生(要は学校の生徒みたいなもん)なので、周りは有象無象の学生が多い。それはそれでいいのだが、この学生達があまりにも「現代基準の有象無象」っぷりを発揮している。仮にも上の階級を目指すエリートの集まりという設定なのだけど、不可思議なことに直面した際の反応、学生同士の会話などがあまりにも現代的な俗さを出している。特に殺人事件の犯人探しとなると、その様相は『刑事ドラマで奔走する噛ませ刑事の慌てっぷり』になる。時代背景が平安時代なのに動きが現代なので、このモブどものせいで全く没入感は得られなかった。

逆に早い段階でそれを見せられたので、これは時代劇ではないと見放して楽しみ方を変えられたのはよかったかな?

②恋愛パートのどうでもよさ

どうでもよかった。姫がヒロインとして出てくるのだが、恋の相手は主人公ではなくその相方となる人物。一応本筋の事件にも絡んでくるのだが、如何せんその本筋との噛み合わせが悪くエピソードが独立して浮いていたのが良くなかった。プラスして、姫のキャラも良くない。自分の人生を他者に決められる運命に嫌気が差し、想い人とも一緒になれないという悲哀を描いているけれど、なんか妙に自分勝手な印象を受ける。思うに、主人公の相方が好きという展開に至るまで自分の気持ちを発露する描写が多すぎたんじゃないかな?あまり感情的なシーンは入れない方がよかったのではないか?そうすれば主人公の相方にとっては『高嶺の華』と映るし、何より相方が想い人だったと打ち明ける時のインパクトが出たと思う。

せっかく姫の部屋のシーンで薔薇の花びらをこれでもかと露骨に散らせて、その内面を仄めかしていたのだから…。なんというか「説明しないと人に伝わらない」という自身の無さが透けて見える脚本に感じてしまった。でもゴジラ−1.0といい、説明してわかりやすく伝えるというのは現代では必要なことなのかもしれない。わかりやすさって大事だから…。でもこれらのせいで姫のキャラの底が浅く見えて魅力を感じなくなったのは惜しいところさん。

③敵の魅力のなさ

ラスボスの唐突感!「誰だよてめぇ」と五条悟もキレるよこれは。

主人公を襲う理由はわからなくもないけど、あまりにも主人公との絡みが薄すぎて、ラスボスの正体が判明した時は逆に驚いてしまった。てっきり育ての親の陰陽師がラスボスだと思った…

でも育ての親の方をラスボスにすると、清明を天皇直下の陰陽師に推薦する人がいなくなるから仕方ないか……いや、それこそ天皇の友達ポジションである相方に推薦してもらえばよかったんじゃないか?立場的に無理なのか??うーん…釈然としない…

…というわけで大きく気になった点は以上の通り。

でも主人公と相方のバディ要素、45歳独身学生の存在感、アクションの盛り上がりと楽しめるところは楽しめた!邦画っぽいテンプレキャラ付けと平安時代という時代設定のミスマッチも喉元過ぎれば面白かったし、やっぱり主人公がね、いいよね!

「お前らユルサナイ…」「お前はいい男だな…」とか、ウヒョー!もうなんかどうでもいいや!ってなれる魅力があった!そういうものとして見ればエンタメとして十分な仕上がりだと思う。個人的に!

でも名作ではねえよ!やっぱり時代設計もうちょっと練ってくれよ!!

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