VSシリーズから見ていて思い入れのあるゴジラ作品。
シン・ゴジラで国内での人気に火がつき、最近までハリウッド版も上映していましたね。
そんなゴジラの、邦画としてはおよそ7年ぶりの新作となる本作『G -1.0』。こちらを昨日見てきました。
☆5の評価で決めるとしたら【★4.1】とさせていただきます!!
ゴジラとしても映画としても、個人的には楽しめました!初代リスペクトも所々あり、なによりゴジラがカッコイイ!!圧倒的強者感はシンゴジ同様健在で、放射熱線の迫力はシリーズ内でも随一と思いました!最近のゴジラ映画はもう「俺の考えた最強の放射熱線」を見られるお祭りみたいなものなので、これだけで生きてきた価値はあるなぁと思いますね。
人間ドラマも個人的には満足です!主人公主軸として考えた場合では結構丁寧に作られた印象を感じます。細かいところで「ん?」と思う突っ込みどころもありましたが、まぁそこはご愛嬌ということで…
それも含めまして、下記からネタバレありで書いていきます。
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【人間ドラマ:敷島浩一】
人間ドラマに関しては、ゴジラシリーズの中でもちゃんとしていたと思います。邦画らしい辛気臭さがありましたが、ちゃんと後半にカタルシスも用意されており視聴後感が良い感じになっていました。
ただ、主人公とゴジラの因縁の薄さが前半は気になりました。特攻できなかった敷島の後悔とゴジラに襲われた経験がいまいち結びつかず、銀座でのシーンまでは正直「この作品ってあまりゴジラいる必要なくね?」とすら思ってました。
シン・ゴジラが登場シーンが少ないながらも徹頭徹尾ゴジラを中心とした展開だったのもあって、前半は特にその辺の不安感がぬぐいきれなかったです。
ただちゃんと因縁がつく展開を設けて、後半からクライマックスまでは駆け抜けていってくれたので本当に良かったです。
ここからはメモがてらあらすじと共にちょこちょこ感想を述べます。
主人公は特攻隊員の「敷島」。母に生きて帰れと言われた約束もあり、その臆病な性格から特攻を臆し、戦闘機が故障したと偽り大戸島に着陸。そこでの上官「橘」に詰められながら肩身の狭い気持ちで一夜を過ごします。
そんなところにその大戸島で恐れられる巨大生物「ゴジラ」が出現。橘の命令で機関銃での攻撃を命じられましたが、ゴジラの恐ろしさに操作が出来ず、そのまま大戸島にいた他の仲間は橘以外全滅してしまいます。
敷島は東京に戻るも、東京大空襲で両親ともに既に死んでいました。約束通りに生きて帰ってきたものの、そこで浴びせられたのは近所のおばさんの罵詈雑言。大戸島で死んだ隊員の家族写真を橘から託された敷島は、なぜ自分がと生きていることを悔やみだしていくのです。
ここからヒロインの「典子」と孤児赤ちゃんのの「明子」が登場し、疑似家族として暮らしていきます。最初は嫌なおばさんだった隣家の「澄子」さんも、赤子の明子を放っておけず世話を見てくれるようになりました。ここら辺の、昭和にありげなツンデレ人情劇は実に邦画っぽくて嫌いじゃないです。実家のような安心感。
しかし、そんな疑似家族のなか数年経過しても敷島は典子、明子との関係に踏み出せずにいます。大体3歳くらいになった明子にも、自分のことを「父親」だとは頑なに言わせようとしません。しかしそれに痺れをきらした典子の方は働きはじめ、自立を目指し始めます。ここで「俺のもとから離れるんじゃないか?」と狼狽える敷島は人間臭くて結構好きです。そうやって暗に発破をかける典子の行動も嫌いじゃないですね。
そしてゴジラと海で再び相まみえ戦うことになるのですが、退けはしたものの負傷してまた日本に戻ることとなります。ここで大戸島でのトラウマに襲われる敷島は典子に、自分が特攻隊員の生き残りだと明かし、それを受け入れられたことで再び生きることを決意します。
そしてドーン。ゴジラが銀座にドーン。ガコンガコン。
典子は死にました。
なんか自宅のシーンでこれ見よがしに典子の白黒写真がピックアップされていたので、まぁそうだろうなと思ったんですよね…
典子の死後、敷島は大戸島で死んだ隊員の写真を眺め「…やっぱ許してくれないよね」と、どん底へ突き落されていきます。ゴジラへの憎しみにかられた敷島は仲間の誘いを受け、民間設立の駆除団体へと入るのです。
そこで敷島はゴジラへの特攻を決意します。ゴジラとは海で戦った時に、口腔内(体内)からの攻撃に弱いことを目撃している。なのでいざという時は自分がゴジラの口に突っ込み相打ちになる覚悟を決めるのです。
なんとか日本に残っている戦闘機を見つけ、その整備に大戸島でのもう一人の生き残り、橘を呼び出します。ここの呼び出し方が面白くて「あの大戸島で仲間が死んだ責任は全部橘のせい!」という手紙を橘が元所属していた部隊の人達に送りまくっていたところ。ここの無茶苦茶感と手段を選ばない感じはけっこう好きです。
これで橘が来てくれるんですが、敷島の四肢を縄で縛って殴りつけてきます。
当然ですよね。むしろ殴っただけで帰ろうとする辺り「え、それで済ますの?優しくない?」とすら思えました。
橘は敷島の覚悟を見出し、計画に協力します。橘は罪悪と憎悪を抱えて突き進みますが、その危うさと後悔を間近で見た橘は絆されました。ゴジラ殲滅の出撃直前、橘は戦闘機に備え付けた脱出システムの説明を敷島にしたうえで「生きろ」と伝えました。
ここまで自分を一番憎んでいたであろう橘に許された敷島。ここは普通に熱くなっちゃいました。正直、脱出については橘が敷島を騙して生きさせるように仕向ける展開の方を予想していたので、シンプルに「生きろ」と言う展開は色んな意味で良かったです。ですよね、そうしないと色んなわだかまりが残りますものね。
最終的にゴジラの口に突っ込むわけですが、ここで自然と敷島は「死ぬか生きるか」の2択を選択することになります。そして「生きる」方を選択したとわかる所は普通に気持ちが良かったです。
そして典子は実は生きており、作戦後に敷島と明子が再会してハッピーエンド。全てが許されたと思わせる展開は美しかったです。
【ゴジラについて】
ゴジラのデザインは良かったですね!ほどよくキャッチ―感がありつつ凶悪な感じと昨今のゴジラのデザインに即しておりとっつきやすいと思います!
具体的にはギャレゴジの体躯、シンゴジの手、若干平成vsシリーズの面影を残す顔といったハイブリッドなデザインだと感じました。
そんなゴジラの今回の活躍は、昨今の作品にも負けていません。シンゴジ同様、初代をリスペクトした『完璧な人類の敵』として登場します。
最初の大戸島での大暴れは結構地味でしたね。でかいし強いんですがどちらかというとプレデターとかのホラー感というか、ちょっと違うなぁという印象があるにはありました。まぁここは前振りというところでしょう。
2回目の登場は海。ビキニ環礁の核実験で強化・巨大化したゴジラと敷島との戦闘です。個人的にはここの戦闘が何気に今作品で1,2を争うくらい好きなシーンですね。
大口を叩く秋津が隣で仲間の船を食らうゴジラを見て「ありゃ無理だ」と手のひら返す所は、やっぱゴジラさんパネェっすとなって好きです。そこから逃げの一途で拾った機雷と備え付けの機関銃でなんとか切り抜けるんですが、圧倒的な戦力差でなんとかしのぎ切る展開は胸がドキドキでしたね。
紙一重のところで戦艦が救援にくるんですが、その戦艦が瞬殺されるのも含めゴジラの絶望感がよく出ていたと思います。
3回目の登場は銀座。満を持しての本土上陸。
電車を噛み砕いたり街を破壊したりと「これよこれ」といったゴジラ詰め合わせ。もはや水戸黄門ですね。
放射熱線もここで初お披露目(海でも出してたけど)となりますが、今回の放射熱線は瞬間スピードタイプ!シンゴジはレーザーのような熱線であれも度肝を抜かれましたが、今回のもまた別のアプローチを仕掛けていて良い…。熱線自体はほぼ一瞬なんですが、フラッシュかというくらいの白くまばゆくなる画面とエフェクト、射線先での爆発とその後の爆風。余韻のキノコ雲…!!ここら辺は敷島の無念よりも「God…zilla…」で恍惚としてましたワタクシ。
熱線前の背びれガコンガコンといい、お前本当に生物か?という気はしましたが、上手く盛り上げてくれたと思います!!
4回目は決戦の海、相模湾。ゴジラ駆除のワダツミ作戦ですね。
事前に作戦を立て、それにのっとって行動する殲滅チーム。ゴジラの周りを旋回し機器をとりつけていくアナログさは勢いと気力って感じで面白かったですね。作戦が上手く立ち行かないというのも映画の定番ではありますが、それをどうにかしていく工程は(粗は気になったけど)手に汗握る感じで良かったです。
あとゴジラのテーマの使い方が最高でした。あれ、初代では自衛隊の出動シーンでしたからね。今回は作戦チームが動き出す際に音楽をのせてきていたので、初代リスペクトだなと肌で感じられました。実際それで作戦を進行していくのは盛り上がったので、これは素晴らしかったと思います。
最後に戦闘機の特攻で倒せたのも、水圧の高低差でぐずぐずになった身体にぶつけられたという理由もあるでしょうし、納得のいく上手な倒し方だったと思います。
ゴジラの最期も綺麗でしたね。ゴジラの死のシーンは初代、vsデストロイア、シンゴジで書かれますが、今回はどちらかというと初代やvsデストロイアのような妙なもの悲しさと神秘さを合わせた描き方だったなと。殲滅チーム全員が敬礼をしたというのも印象的です。
今回のゴジラは「破壊神」という今までのようなテーマもあったでしょうが、「神」という要素は今回は薄味。一番は「戦争のメタファー」だったんでしょうね。
敷島の物語と絡め、ゴジラを倒すことで作戦メンバー全員の戦争が終わったことを示唆しているのでしょう。扱い方としてはちゃんと本筋とも絡め、ちゃんと処理出来たと思います。
【気になった所】
他の方のレビューも見たのですが、自分もここは気になったという所を何点か。
◎演技の過剰さ
シンゴジのルー大柴みたいなキャラはいなかったのですが、「ん?」と思うような過剰演技の箇所がいくらかありました。
個人的には機雷除去チームの船長「秋津」と見習いの「水島」。そういうキャラだと言えばそうなんですが、ちょっとキャラキャラし過ぎていて浮いていた気がしなくもないです。特に駆除作戦で秋津が水島を船に乗せない判断をした際、去り際に「今後の日本はお前らに任せた」とボソッと言うシーン。流石に臭いなぁ…と。
他のレビューで、万人受けの為にわかりやすい演技と説明セリフが必要だったのだろうかというのを見て、ああなるほどなぁとはなりました。が、流石にここはセリフで言わなくてもわかるよ…という所をこれ見よがしに見せてくるシーンがあったのが個人的には引っかかりました。
◎展開の為の粗
敷島のシナリオについては丁寧だなと思ったんですが、ちょいちょい気になる所も見られました。
箇条書きすると
・典子が列車から逃げた後、なぜかゴジラの進行方向にいるところ
・民間の駆除作戦で集まったメンバーが突然「あんなの倒すの無理だろ!」とヤジを飛ばすところ
・駆除作戦中に見習いの水島が仲間を連れてきてゴジラを引き上げる所
典子はもうちょっとゴジラが通ってきた道とか、逃げる方向あったろ?と思いましたし、駆除作戦のメンバーも「ゴジラ倒す為に集まったんじゃないの?なんで作戦聞く前から無理だのなんだの言ってんの?」となりました。
ゴジラを引き上げる所も盛り上がりどころではあるんですが、水圧の急激な変化が重要な作戦で「ちんたら集まってちんたら引き上げるようなことやってんじゃねえよ!」と突っ込んじゃいました。まぁここはもうそういうものだと思って飲み込むしかないんですけど。
【個人的な感想】
シンゴジほどではなかったですが、今回も印象的なカットが多くあったと思います。
最初の大戸島のシーンは展開は地味ですがカットは綺麗で、そこがなんとか映画を見ていくモチベに繋がった気はします。全体的に海のシーンも綺麗でしたし、戦闘機の操縦席からのカットも良かったですね。敷島視点でゴジラに銃を撃ち込むシーンは、山に囲まれたゴジラがやや小さく見えたりしていて、vsメカゴジラを彷彿としました。あの頃の特撮を見ているような感覚です。
それと俳優さんの演技については、主要キャストについてはほとんど良かったと思います。演技についてはあまり詳しくありませんが。
洋画のようなスタイリッシュさはないと思いますが、国産ゴジラらしい邦画要素を出来る限り上質に保ってきた辺りはとても評価しています。vsシリーズを中心にゴジラを観てきた私としては実家のような安心感を担保しつつ、新しいゴジラの体験と映像美を見ることが出来て満足しました。
これからもゴジラシリーズは色んな形として続いていってほしいです。
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